裏SNS " F " - 友か、秘密か -

「 ごめん、遅くなった!」



制服の裾を押さえながら、
廊下を小走りにやってきたのは、
大橋 詩帆だった。



「 俺が呼んだ。俺ら、協定を結んだの 」



琉生が言うその「 協定 」という言葉に、
自然と口元がほころぶ。



「 また唐突だな。でも……いいと思うよ 」

「 だろ?響ならそう言うと思ってた 」



琉生はニッと笑って、
スマホを操作する指を止めた。



「 で、詩帆。これ見て 」



彼が開いたFの投稿画面には、
とあるネットの記事が表示されていた。



「 南雲 雪 」



その名を目にした瞬間、
詩帆の目が大きく見開かれる。



「 南雲……雪?」

「 夏休み中に、Fで偶然見つけた。
ほんの一瞬だけど、使える期間があってさ 」

「 え、ちょっと待って。
Fって、夏休みも動いてたの?」

「 いや、投稿はできない。
でも一部機能だけ生きてた 」



琉生は少しだけ声を落として、続けた。



「 で、試しに“南雲 雪”って名前を
調べてみたら――出てきたのが、9年前の事件 」



琉生は画面をスクロールしながら、
あの事件を、詩帆に説明する。



ーー9年前。
当時8歳の少女が、夕方頃、
見知らぬ男に手を掴まれそうになり、

とっさに振り払ったら、
その男が転落死したという事故。



そして、記事に載っている少女の写真を出すと、
琉生は、ぽつりと告げた。



「 しずくに、似てるでしょ 」



空気が止まる。
詩帆は言葉を失い、
ただじっと琉生の顔を見つめていた。



「 Fがこの名前を拾ってる以上、
誰かがいつか触れる。なら、俺がやる 」



彼の声音は、
いつになく真剣だった。



「 ……ちょっと、待って。考える。
明日、返事する 」



詩帆はそう言い残すと、
静かに、廊下を後にした。