裏SNS " F " - 友か、秘密か -

一方で、百瀬 梨々花 の席には
笑いの気配はない。

誰も、
彼女に話しかけようとはしない。



彼女が何も言わないことが、
逆に、
信憑性を強めていくよう。



( 沈黙は、
事実だと言っているようなものなのに。

……だからといって
反論すれば、炎上する )



悠は、
自分のスマホをもう一度見つめた。

そこには、投稿と評価、
そして " Point " の表示。



「 ……怖いな 」



自然に漏れた独り言。
その声に、
背後から反応があった。



「 だよね。
ちょっと怖いっていうか……変なアプリ 」



去年も同じクラスだった
白石 遥華。



普段から大人しいタイプだが、
今日ばかりは
何かを感じたのかもしれない。



「 変だよな。
自動で入って、勝手に設定されて……」

「 うん。でも、みんな使ってるし。
こういうの、止められないよね 」



口調は淡々としていたが、
目元にはうっすらと不安の色。



誰かの噂話を聞いてしまった時のような、
わずかな緊張がそこにあった。



「 白石さんは?投稿しないの?」

「 たぶん。見てるだけになると思う 」



そう言って、
彼女はふわりと笑った。

乾いたような、
けれどどこかあたたかい笑み。



( 普通の子だ。
だけど、 " 分かってる " 子 )



無関心ではないけれど、
巻き込まれないように慎重に立ち回る。



彼女の返答には、
そういう絶妙な距離感があった。



中央では、変わらず
萌子や琉生、翔、根岸たちが

先ほどの投稿について
盛り上がっている。



教室の空気は完全に、
" 新しい遊び " へと傾きはじめていた。


( このアプリは、人の興味を吸い寄せる )



真偽も、善悪も、
きっと意味を持たない。

面白いと判断されれば、
それこそが価値になる。



悠は静かに立ち上がった。
スマホを制服のポケットに入れながら、
教室の外を見つめる。



ーーすでに、この場にいる誰もが " 標的 "。



止められない。
見過ごすこともできない。



そしてこれは、
ほんのはじまりに過ぎないと



―― そう、確信した。