氷上のキセキ Vol.1 ~リンクに咲かせるふたりの桜~【書籍化】

あなたのいない春。
私はひとり、満開の桜の木を見上げていた。

去年はこの桜の下で、あなたと笑っていたよね。
その前の年も、前の前の年も……。

もう何年も、あなたと一緒に春を過ごしてきた。
ひらひらと舞い落ちる桜の花びらを、競い合ってキャッチしたよね。

簡単そうで、難しくて。
何度やってもパチンと合わせた手のひらに、私は花びらをつかめなくて。
でもあなたはたった一度で、いともたやすく手の中に花びらを閉じ込めた。

「ほら」
そう言って私に見せたあなたの笑顔が、今も目に焼きついて離れない。

「……(あきら)

声に出して呟いた時、こらえていた涙がじわりと込み上げてきた。

どこにいるの?
なぜなにも言わずにいなくなったの?

このままずっと会えないの?
どうしたらまた会える?

「……会いたい」

ポタポタと涙がこぼれ落ちる。
その時、後ろから誰かの足音が聞こえてきて、私は急いで涙を拭った。