大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「あら、ここ暫くなかったと思ったら、今回は随分と長いのね」

特に動揺もしないティアラ。
アリアがローザンに来てから、セルファが国を離れることはなかったのだが、その前は度々国外に出ていたのだ。
しかし、長くて3日間、日帰りのケースもあった。

「ええ、今回はイザリア国で遠いのです。陸路でも行けますが、厳しい山越えがあるので、港から船で行くことになりました。そのため10日間かかります」

「それは大変。長い船旅になるのね」

ティアラはチラリとユフィーリオを見た。
セルファを見ているユフィーリオがそれに気付いたかどうか。

「それで、ユフィーリオ様は帯同なさるの?」

ティアラはセルファに質問した。
今まではかなりの確率でユフィーリオも一緒だったのだ。
別邸にただ1人残されて、ティアラは寂しさと屈辱に何度も襲われていた。

「いえ、今回は私と父で行きます」

簡潔に答えるセルファ。

「そうなんですの」

ティアラはそれだけ確認すると、後は特に興味もない様子で発言をしなくなった。