大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

このまま無言でやり過ごしたいのだが、セルファは気を遣っているのか、何かとミトに話しかけてくる。
その度に、慎重に言葉を選びつつ目をハートマークにして答えなければならず、ミトは辟易した。
２人のやり取りを、ユフィーリオは余裕の態度で見ている。

（あ～、早くティアラとアリア、どっちでもいいから来てくれないかなぁ）

いけないと思いつつも、チラチラと時計を見てしまうミト。
食事が始まる１分前。
ようやくティアラとアリアは数十秒の差をつけてやってきた。

「セルファ、どうして…？」

最初に来たのはアリアだった。
俯いて入室したはずなのに、すぐにセルファの存在に気付き、早足で近づきセルファの腕に触れた。
昨夜、影が訪れたのはアリアの部屋である。
また４日間、最愛のセルファに会えないと慟哭していたアリアは、予想外の出来事が嬉しくてたまらない。

（なるほど。あんな風にラブラブな感じを表現すれば良いのね）

ミトは今後のために心にメモをした。

「驚かせてしまったかな？」

セルファは愛しげにアリアの頭を撫でる。
顔を赤らめ、アリアは目を細めた。
アリアにとっては、ここにセルファがいる理由など興味はない。
セルファに会えれば、他はどうでも良いのだ。

「嬉しいです…」

顔をセルファの胸に埋める。
２人の露骨な愛情表現に、見ているほうが恥ずかしくなってしまうミトである。

（これも見習うべきか…。う～ん、できそうにないけど…）

目の前で繰り広げられるラブシーンに、ミトは目のやり場がなく困ってしまう。