大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

(図書館で顔を合わせた振りだわ~)

しげしげと見つめていると、目が合ってしまった。

(やばっ、変に思われたかな?)

「そんなに私がここにいるのが珍しいかな?」

セルファはいつものように穏やかな微笑でミトに話しかけた。

「いや、え~っと、そんなことありませんわ」

取り繕って微笑んでみる。
引きつってなければいいけど。

ちなみに、ユフィーリオもいる。本当はセルファの隣に座りたいだろうに、いつもの席に静かに座っていた。
ティアラとアリアは毎回食事の時間ギリギリまで来ないので、今は召使とミトたち3人だけだ。

「食事の席にくるのは本当に久しぶりだし、物珍しそうに見られても仕方ないね」

そう言ってセルファは笑顔で肩をすくめた。
何を言っても墓穴を掘りそうで、固まった笑顔のまま突っ立っているミト。

「ミト様、お座りになったら?」

ユフィーリオに席を勧められてしまった。

「あ、はい…」

本当はこの場から逃げ出したいのだが、そういうわけにもいかず、ミトは素直に自分の席につく。
いつも以上に居心地の悪さを感じて全く落ち着かない。

ユフィーリオと顔を合わせるのも久しぶりだった。
公務が忙しいのか、ユフィーリオは数日間王宮で過ごしていたのだ。

「実は少し報告があってここに来たのです。話は皆が揃ってからにしようと思っています」

セルファにそう説明された。

「はぁ」と曖昧に返事をしそうになって、ミトは自分を叱咤した。

「そうなんですか?お話ってなんでしょう?気になりますわ」

「セルファが気になって仕方がないけど会えて嬉しいの♡」という気持ちを込めて言ってみる。

「もう少し待っていてください」

セルファはそんなミトを慈しむように見つめた。
どうやら演技は上々のようだ。
ミトは少しホッとした。