大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

3度目の夜の後、ミトは自分の行動を少し自制することにした。
危ない橋を渡っていると気付いたのはもちろん、自分の行動が周囲を振り回している自覚が芽生えたせいでもある。
アクティブに動きすぎて、またセルファと顔を合わせるのも恐かった。自分の演技力に自信など欠片もない。

最近のミトは、統計学者の先生を手配してもらい、統計学の勉強に勤しんでいた。
影とセルファの計らいのお陰で、本格的に統計学を学べるのは非常にありがたい。
勉強という名の趣味の合間に、別邸をウロウロと散歩したり、キッチンを借りてお菓子を作ったりしていた。
刺激は少ないが、それなりに楽しく穏やかに日々をミトは過ごしていた。

王宮に行かなくなったので、セルファにも全く会わなくなった。
忙しいのは知っているが、それにしてもセルファは別邸に顔を出さない。
別邸には一応セルファの部屋もあるのだが、毎日王宮の自室で過ごしている。
セルファが別邸にいると、影との入れ替わりで周囲にバレるリスクが高まるから、あえて王宮にいるのかもしれないと思うミト。
それでも、本当に夜だけの夫婦生活とは、情緒も減ったくれもないと。

あれから何度か影と夜を過ごした。
影はセルファそのものでミトと接している。
なんだかんだ理由をつけてミトに触れてくるが、3度目の夜以上の行為をされることはなかった。
大きな変化もなく、ミトがローザンに来て1ヶ月が過ぎた頃。

「うわ…」

(珍しい!)

思わず口に出してしまいそうになり、ミトは慌ててその言葉を飲み込んだ。
ある日の夕食、いつものように最悪の雰囲気の食事の部屋に入ると、なんとセルファがいるではないか。
影ではなく、本物の方だ。