大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「そう怯えないでください。別に取って食おうとしているわけではありません」

「え?そうなの!?」

予想外の答えに、ミトは顔を上げて影を見た。

「取引は取引として、10ヶ月間は待ってあげましょう」

「本当に?」

「ええ。私も煩わしいのは好みません」

「よかった~…」

ホッとして脱力するミト。
満足したはずなのに、再び面白くない気分になる影。

「ただ、このままというわけにはいきません」

ギシっと音をたてて、影が近づいてきた。
ミトはギョッとして影を見つめる。

「ある程度の交わりは慣れてもらわなければね。そして、本当ならどういうことをしていたかも、知識として知ってもらわなければならないでしょう。
そうでなければ危険です。またいつどこでミトがセルファに会うかわからないのですから」

「それって…」

ミトはもう一度青ざめる。

「今度は抵抗しないでください。優しく教えますから」

そして影はミトに手を伸ばした。

(え?え?この流れで本当にいいの?逃げるべき?)

ミトは展開の早さについていけない。
考えがまとまらないまま、影の手が自分の頬に触れた瞬間反射的に目を閉じた。
直後に唇に柔らかな感触。

(キスだー!!!)

両手で顔を包まれ、優しくキスをされた。
先ほどのキスとは全然違う。壊れ物を扱うかのような、優しくて繊細なキス。
数秒で唇は離れる。ミトは目を開けた。

「それでいい。お利口だ」

至近距離に影の顔。
ミトは慌てた。