「………そうよね。そんなことは許されないと思う。
でも、好きでもない男の人とそういうことをするなんて、やっぱり嫌だもの…。
覚悟はしていたつもりだけど、気持ちまで素直に受け入れることはできなかったと思うわ…」
自分の発言に、ミトは驚いていた。
影に聞かれ、初めて明確になった自分の本心。
政略結婚はラミリアのためでもあり、王族に生まれた自分の義務でもある。
頭で理解していても、気持ちは全くついてきていなかったのだ。
「でも…」
ミトは一呼吸あけて続けた。
「最初は好きじゃなくても、お互いを気遣って大事にしようと思っていれば、きっと、親愛の気持ちが育つとも思っていたの。側室だけどね。
ローザンの王子は博愛で人格者だと聞いていたし、なんてったってお父様が太鼓判を押した婚姻だったから」
影は黙ってミトの言葉を聞いている。
「だから、悲観してこの国に来たわけではないの。ただ、思ってもみない事態になったから、足掻いてみたくなったんだと思う」
「そんなこと、オレに言われてもどうすることもできない」
セルファではなく自分の言葉で、影は小さく呟いた。
その表情が少し寂しそうに見えるのは、ミトの気のせいだろうか。
「あの…」
「ミトの気持ちはわかったよ。だからと言って義務を放棄していいはずがない」
そう言った影の表情は、セルファそのものだった。
優しくて、涼しげで、慈愛に満ちた美しい顔。
でも、好きでもない男の人とそういうことをするなんて、やっぱり嫌だもの…。
覚悟はしていたつもりだけど、気持ちまで素直に受け入れることはできなかったと思うわ…」
自分の発言に、ミトは驚いていた。
影に聞かれ、初めて明確になった自分の本心。
政略結婚はラミリアのためでもあり、王族に生まれた自分の義務でもある。
頭で理解していても、気持ちは全くついてきていなかったのだ。
「でも…」
ミトは一呼吸あけて続けた。
「最初は好きじゃなくても、お互いを気遣って大事にしようと思っていれば、きっと、親愛の気持ちが育つとも思っていたの。側室だけどね。
ローザンの王子は博愛で人格者だと聞いていたし、なんてったってお父様が太鼓判を押した婚姻だったから」
影は黙ってミトの言葉を聞いている。
「だから、悲観してこの国に来たわけではないの。ただ、思ってもみない事態になったから、足掻いてみたくなったんだと思う」
「そんなこと、オレに言われてもどうすることもできない」
セルファではなく自分の言葉で、影は小さく呟いた。
その表情が少し寂しそうに見えるのは、ミトの気のせいだろうか。
「あの…」
「ミトの気持ちはわかったよ。だからと言って義務を放棄していいはずがない」
そう言った影の表情は、セルファそのものだった。
優しくて、涼しげで、慈愛に満ちた美しい顔。



