大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「ええ。思っていたよりずっとローザンって大らかだわ。そうそう、王宮の中庭について聞きたいんだけど…って、な、なに?」

上機嫌で話をするミトに影は接近した。
思わず身を仰け反らせるミト。

「話は後でゆっくり聞かせてください。まずは、ベッドに行きましょう」

「きょ、今日も?」

「もちろん」

「そんな、毎回証拠残さなくても大丈夫だと思うけど?」

「そういう考え方だから、墓穴を掘るんですよ、ミト。
体の通じ合っている男女が、頬に軽くキスするのは挨拶と同じ。親愛の印です。
それを不自然なまでに赤面するのはおかしいでしょう」

セルファの穏やかな瞳のまま、影はミトにチクリと釘を刺す。

「うわ、そんなことまで知らされてるの?」

妥協のない情報共有にビビるミト。

「ミトは考えが甘すぎます。少し慣れてもらわなければ困る」

「え?ちょっ…!!」

影は素早く動いた。
文句を言う前にミトは唇を塞がれてしまった。
一瞬何が起こったか把握できず反応が遅れたミト。

「ちょっと!!」

ドン!と影の胸を押す。
一瞬唇は離れたが、後頭部を手で抑えられ、再びキスをされてしまった。

「んんっ!!」

抵抗しようにも、ガッチリと頭を固定され、利き手は掴まれている。
それでもミトは左腕をバタバタとさせ、なんとか逃げようとした。

「暴れないで。優しくできなくなります」

唇を離し、至近距離で言う影。

「話が違うわ!」

とっさに逃げようとしたが、ガバッと抱き上げられてしまった。

「え?え?ええ!?うきゃっ!」

そしてベッドに放り投げられる。
体勢を整える前に影が覆い被さってきた。
反射的に両手を突き出すミト。
その細い手首を影は掴み、ベッドに押さえつけ、自分の体重をミトに預けた。