大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

(なんか、調子狂うなぁ…)

ミトはベッドで眠る影を見てため息をついた。
今日は影と3度目の夜だった。

「会いたかったよ。ミト」

いつもの時間に、いつものようにセルファを装い、影は優しい笑顔で訪れた。

「私もですわ」

扉が閉まるまでは、ミトもセルファの側室として演技する。大根役者だが。

「どうぞお入りになって」

多少引きつった笑顔を保ちつつ、ミトは影を招き入れた。

バタン。

前回は扉が閉まると同時に影は地を出したので、今回もそうするとミトは思っていたのだが…。

「ここでの生活には慣れてきましたか?何か困ったことはありませんか?」

影はセルファのままで話を続けたのである。

「え?」

思わずキョトンとしてしまうミト。
まじまじと影を見てしまう。

(うん。間違いない。やっぱり影だわ)

「どうしました?ミト」

不思議そうにミトを見る影。

「え~と、どうしてセルファのままなの?」

ミトは率直な疑問を投げかけてみた。

「質問の意味がわからないな…」

影は首を傾げた。

「意味がわからないのは私の方だわ。いつもの調子はどうしちゃったの?」

「これがいつもの私です」

すました顔で影は答える。

「まぁ、そりゃ割合的にはそうなのかもしれないけど…」

ミトは憮然としてしまった。

「ミトも乱暴な男より、紳士的で優しい男の方が良いでしょう?」

そして影は微笑した。
THE!王子様である。