大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「真面目なオレは、やっぱり仕事を先に終わらせることにした」

「え?」

ミトの肩を抱く影。
唐突な行動に、驚いて硬直するミト。
影は構わずキスをしようと顔を近づけた。

「ちょ、ちょっと!」

反射的に両手で影の唇をミトは塞ぐ。

「しない約束でしょ!」

「だから、証拠作りだよ」

「今回も?」

「あったりめーだろ。マニュアルがあるんだよ、マニュアルが」

「キスマークがマニュアルなの!?」

不服を唱えるミト。
全く、夫婦の愛の証を何だと思っているのか。

「平等がわかりやすく目に見えるだろ」

「恥ずかしいから、見える場所は止めてって私が言ったことにしたら?」

ダメもとで食い下がってみる。

「それでいいのか?」

しかし、影は意地悪く笑い飛ばした。

「いいわよ」

「本当か?」

「私はそれで構わないわ」

「それは、見えない場所につけるってことになるが、異論ねーな?」

「見えない場所!?」

「胸とか」

「む、ムリッ!!!」

慌てて両手で自分の胸を守るミト。

「だろ?じゃあ、前回と同じ場所でいいだろ」

そして影は再び顔を近づけた。

「うわわっ!」

仰け反ってひっくりかえるミト。
影は構わず覆い被さる。

「なんでキスしようとするのよ!」

「ああ?キスぐらいしねーと、味気ないじゃねーか」

「いや、いいです!しなくていいです!キスマークだけで充分よ!」

本気で嫌がるミトに、なぜか影は少し凹んだ。

「そういう契約のはずよ!」

「ちっ、わかったよ」

ミトは心を無にして耐えることにした。