大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「あ、無理しなくていいよ」

「無理っつーか、これがオレの仕事だから」

「仕事…」

影は全種類しっかりと食べた。

「これ、残りは持って帰れるのか?」

「ええ。どうぞ。気に入ってくれたの?」

「なかなかうまかったぜ。セルファに見せて食わせないとな。これもつじつま合わせってやつだ」

「あ、なるほど…」

仕事の意味を理解し、ミトは少し考え込んでしまった。

「じゃあ、セルファを理由にお菓子作りをするのは、止めた方がいい?余計な仕事増やすようなものでしょう?」

申し訳なさそうに言うミト。

「へー」

影はしげしげとミトを見つめた。

「割と気遣い上手なんだな」

「その発言、逆に失礼なんだけど」

「ははっ!おもしれー!」

喜ぶ影。

(あれ、こんな風に笑うんだ)

ミトは親近感を覚えた。

「あなたこそ、面白いわよ」

「オレが?」

笑いながら問い返す影。

「真面目なんだか不真面目なんだか、良くわからないわ」

「すっげー真面目だけど」

「うん。そうなのかも」

そう言ってミトは微笑んだ。
影は自分の心の中の何かが揺さぶられたような気がした。
しかし、それを言葉に表す術を知らない。
それに、追求してはいけない気がした。