大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「そーだ。あなたにも聞いちゃおう」

「なんだよ」

「あ、疲れてるか。そういう約束だったし、やっぱり寝てていいよ」

「気になるじゃねーか。続き言えよ」

むっくりと体を起こす影。

「ここって図書館ある?」

「図書館?なんか探してるのか?」

「ない?やっぱり街に出ないとダメ?ほら、時間はたっぷりあるから、色々調べたいなって思って」

「いや、王宮にあるぜ。膨大な量の書物がおいてあるけど、小説の類は少ないぞ。専門書ばかりだ」

「統計学、あるかなぁ」

「統計学?あるけど、まさかおまえ勉強しようっていうのか?」

予想もしない「統計学」という単語に、影は少々驚く。

「うん。好きなの。数字が」

影は目をしばたいた。

「ラミリアって、女も帝王学やんのか?」

「やらないやらない」

ミトはパタパタと手を横に振る。

「後継者以外の必修は基礎だけなんだけど、個人的に数字にハマったの。独学も限界があるから、誰か教えてくれそうな人いたら、紹介してほしいな」

影は珍しいものを見るような目でミトを眺めた。

「おまえ、本当に変わってるな~」

「そう?いいじゃない。別に」

「悪かないけどさ」

「明日、王宮に行ってみようかな」

楽しそうに言うミト。

「あんまり目立たない方がいいんじゃねーの?」

影はボソリと呟いた。

「あら、どうして?」

ミトは不思議そうに首を傾げる。

「本当におまえってお気楽だよなー。ラミリアは相当平和だったんだろうな」

「どういう意味よ?」

「一人だけ目立ったら点数取りだと思われて、他の妃たちと折り合い悪くなるんじゃねーの?」

これは影なりの気遣いからくる忠告だった。

「ふ~ん?」

良くわからないミト。