大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

とりあえず、今日は厨房を借りてクッキー作りをしている。
すっかり顔なじみになった料理長に申し出ると、激しく恐縮されてしまった。
この国の王族は、自分で料理を全くしないのだろうか。
「私どもで作りますから」との申し出を受けたが、食べたいというより作りたいのだ。しかし、ワガママを通すと料理長に迷惑をかけてしまうかもしれない。
少し考えて、ミトはこう答えた。

「セルファ様に手作りを食べていただきたいの」

この選択は大正解だったようで、そうであればと快く使わせてもらうことができた。

(これから影が来る日はクッキングデーにするのもありね)

そんなことを思うミトである。
ラミリアにいた頃から、お菓子作りは割と好きだし得意なほうだった。
久しぶりのクッキー作りは楽しく、たくさんできたので、目に付いた人に配って歩いた。
そんなことをしているうちに、あっという間に夜になった。

ミトはセルファに扮した影を迎えるための準備をしつつ、父は自分を良く理解していると改めて感心する。
想定外の事件はあったものの、ミトにとってローザンでの側室ライフはなかなか快適なものだった。