大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

それから、食事は食堂でとるようになったが、あまりの空気の悪さにビックリした。
とりあえず、ユフィーリオの参加率が極めて低い。公務で忙しいと言う理由だそうだが、昨日一度昼食で一緒になっただけだ。
思わず「あ、珍しい」と漏らしてしまったミト。

「とても公務が忙しくて、なかなかご一緒できないのですが、どうか宜しくお願いしますね」

ミトのつぶやきをちんと聞いていたユフィーリオは、穏やかな笑顔で返してくれた。
こんなに穏やかで優しい雰囲気なのに、なぜか酷く壁を感じるミトである。

(この人も、影の存在を知ってるのよね…)

セルファを独占している優越感の壁なのだろうか?
良くわからないけど、とにかくユフィーリオは必要以上に関わってほしくなさそうだったので、当たり障りのない会話だけすることにした。

そして、アメリアはものすごい無口。
毎回食事の度に顔を合わせているにも関わらず、小さな声で挨拶だけして、あとは一切話さない。
食事以外は部屋に篭っているのか、別邸をうろついていてもバッタリ会うことはなかった。

唯一気楽に会話できるティアラまでもが、食堂では無口だった。
最初にお茶をした日から定期的に誘われ、すでに3回一緒に過ごしているが、そのときのティアラとは全く別人なのだ。
しかし、ミトは驚かない。

「食事のときって空気悪いから、さっさと食べて切り上げることにしてるの。私、全然喋らないけど気にしないでね」

ティアラから前もって言われていたので、ミトも気にしないことにした。