大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「悪い話じゃない、どころか、ミトにとってこれだけ良い話はそうそうないと思うんだが」

「どうせ、断ることはできないんでしょ」

と言いつつも、少しだけ気持ちが上がるミト。

「そうだが…やはり親としては、娘には快く嫁いでほしいものだ。
どうしても嫌だと言うならば、話し合いを求めることもできるぞ。外交も大事だが、娘はもっと大事だからな」

その発言を聞いて、ここにダケルがいなくて良かったと、キエスは心から思った。

「ありがとう、お父様。私を思う気持ちを疑ったことはないわ」

人の良すぎる父のことが、ミトは大好きだった。
王宮内では外交力の弱さを懸念する輩もいるが、ミトにとっては親である。
小国だが、平和で気さくで穏やかなこの国に生まれて良かったと、心から思っていた。

「ローザン王国は大国だし、うちから一度了承した話を断ったら大変よ。
それに、お父様が言ったとおり、私にとっては魅力的な条件だわ」

自由人な姫だが、王族としての教養と常識はきちんと持ち合わせている。

「この縁談、喜んで承ります」

ミトがそう言って深々と頭を下げると、ギダはホッとすると同時に、とても複雑な心境になった。
娘を嫁に出す父親とは、身分も年齢も関係なく、切なく悲しいものなのだ。
こうして、ラミリア王国のミト姫は、ローザン王国のセルファ王子のもとに嫁ぐことになったのである。