大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

本を読みながら優雅にお茶を飲んでいたティアラは、ミトに気付くと声をかけた。

「あなたもどう?」

「ありがとう」

せっかくなので、ミトは呼ばれることにした。

「ミト様にも、同じものを用意してあげて」

ティアラは自分の侍女に申し付けた。

「いえ、私が」

慌ててエイナが名乗り出る。

「いいのよ。このお茶、母国から取り寄せていて、私しか持ってないの。是非、ミト様に飲んでいただきたいわ。それより、あなたは少し休憩したらどうかしら?」

そう言って、ティアラは建物を指差した。

「それは良い提案だと思うわ!」

ミトが笑顔で賛同する。

「ミト様…」

じろっと睨むエイナ。

「いいじゃない。同じ立場同士、気兼ねなくお喋りしたいわ。悪さしないから、エイナはちょっと外してよ。ティアラ様がせっかく誘ってくださってるんだし」

ふぅ、とエイナは肩でため息をついた。

「わかりました。では中で控えていますから、何かあったら呼んでくださいませ」

そして、エイナはティアラに一礼して、渋々感満載にその場を離れた。

「よっぽど侍女からの信頼が薄いのね」

クスクスと笑いながら、ティアラは椅子を指し示す。

「どうぞ。なかなか素敵な座り心地よ」

「ありがとう」

ミトは言われるままに腰掛けた。
木の葉の隙間から日の光が少し差し込んでキラキラしている。風は心地よく、ホッとできる空間だ。
そこへ、ティアラの侍女が用意したお茶を運んでくる。

「私の母国の名産品なのよ。どうぞ」

「綺麗な色…。いただきます」

コクリと一口飲むミト。

「美味しい…」

無意識に口から感想が出た。
ティアラは満足そうに笑った。
ミトも笑顔を返す。三人の妃の中で、一番話しやすそうだと感じた。