大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

(影は取引を受け入れたんじゃないの?)

絶望的になって、諦めようと思ったとき、ようやく影が離れた。

「ま、こんなもんか」

「もう、なんなのよ…」

「泣くなって。これがキスマークだよ」

影がもう一度裾をあげてミトの太ももを露にした。

「やっ!」

「やっ、じゃなくて、これだよ。これ」

「変態!」

ミトは手近にあった枕を投げつけた。
見事影の顔に命中する。影に避ける気がなかっただけだが。

「いいから見てみろよ。自分の足」

そう言って、影はミトから離れた。

「全く、なんなのよー!」

グチグチと言いながらも、ミトは自分の内腿を確認する。
白い肌に、紅い小さなあざのような物がいくつか点々としていた。

「???」

「それがキスマークだよ」

今度はミトの腕を取り、影は吸い付いてわかりやすく跡をつけた。
突然の行動に身動きできないミト。

「ほら、こうすると、できるわけ。要は内出血」

影の唇が押し当てられた場所に、内腿にあったものと同じ跡が残されていた。

「首と胸元にもつけといたぜ」

呆然とキスマークを眺めるミトの横に、影はボスンと横たわった。

「ちょっと!なに寛いでるのよ!帰ってよ!」

「初日は朝まで一緒に過ごすことになってるんだよ」

目を閉じていた影は、如何にも面倒そうに答えた。

「ええ!?」

「そうやって、妃が何人いても、皆平等に大切にしてるんですよってアピールだよ。夫婦が朝まで一緒のベッドにいるのが、むしろ普通だろ」

「そ、そうか…」

素直に納得するミト。
先ほどの交渉時とは形勢逆転、すっかりミトは影に翻弄されている。

「あんたも寝たら?疲れてんだろ」

ミトは無言。
隣に男がいるのに、落ち着いて眠れるはずがない。

「ま、仲良くやろーぜ。オレは寝る。おやすみ~」

一方的にそう言うと、影は目を閉じた。
すぐに寝息が聞こえてきた。
ミトは寝顔をしばらく呆然と見つめる。

「はぁ…」

そして、大きく息を吐いた。