大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「やっぱり、あなたには触れてほしくない。そういうことは、好きな人としたいと思ったわ。
割り切って覚悟も決めてきたけど、その相手が別人だなんて、あんまりだと思う。あなたがセルファじゃないとわかったら、決心も鈍るのよ。最後まで騙してほしかった」

影はミトの意図を探ろうと、言葉と表情の変化を見逃さないよう意識を集中させている。

「あなたのせいで、変な欲が出ちゃったのよ」

ミトはこの1ヶ月、初恋もまだな状態で結婚することを受け入れるために、ずっと自分に言い聞かせてきたのだ。
それがラミリアの姫の役目だと。

「私も口裏をきちんと合わせるから、やることはやってる、ということにして」

「はぁ?」

どんな無理難題を言われるかと構えていた影は、思わず間の抜けた声を出した。

「別に部屋を監視されてるわけじゃないでしょう?私たちが夫婦の営みをしたかどうかなんて、誰にもわからないはずよね?
ユフィーリオ様だって、結婚2年で子を授かってないんだから、私が妊娠しなくても、行為をしてないって疑われたりはしないでしょう?」

「そんなにオレがイヤか?」

ミトの発言に、影は男としての自信を傷つけられたような気がした。

「あなたがどうこうじゃないわよ。
ただ、恋愛感情もわからないままに、恋人達がする行為をしなければならないってことが、寂しいだけ。少しでいいから、恋心を感じてみたいわ」

「あんた馬鹿か?」

影は目を丸くして驚いた。

「なんだ?感情の自由って、恋愛の自由を指すってことか?
第一王位継承者の妃の1人なんだぜ。誰があんたと恋に落ちて手を出す?そんなヤツ、この国にいるはずねーだろ」

そしてゲラゲラと笑い出す。