大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「とにかく、一度離れて!お願い!逃げないから!」

どっちにしろ、男が覆い被さっている状況で、冷静になれるはずがないのだ。

「仕方ないって割り切ってるんじゃねーのかよ。往生際悪いヤツ」

「いいから、一度離れてよ!」

「さっさとやること済ませたいんだけどな。これでも毎日多忙で疲れてるんだよ」

「そんなこと知らないわ」

「無理矢理やってもいいんだぜ」

意地悪な視線を向けられ、ミトは危機感を持つ。
この場をなんとかしなければ…。
咄嗟に考えて次の言葉が出た。

「そんなことしたら、あなたが叱られるんじゃないの?」

ミトは必死に頭を回転させる。

「あなたの仕事はセルファそのものになることでしょう?私に乱暴したことがバレたら、セルファのイメージぶち壊しじゃない?明日エイナたちに『怖かった』『辛かった』って言いふらしてやる!
というか、どんなに私に指摘されても、あなたは最後までセルファを演じるのが正解だったんじゃないの?」

ピクリ、と影が眉を上げた。

「とにかくどいて!」

「…ちっ」

正面から見据えてミトが言うと、不機嫌そうに影は離れた。

(これがこの人の弱点なのね。よーし…)

ミトは作戦変更をする。
影の立場の弱さを利用するのだ。