大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「DNAが同じってことは、セルファでもオレでも、どちらの子でもいいってことだ。セルファはユフィーリオ以外の相手をオレに押し付けて、毎晩最愛の妃と夜を共に過ごしてるってわけだ」

クックと影は笑った。

「皆が憧れる美しい王子様は、自分の愛する者だけを優先させる、冷酷非道な男なんだよ」

そう言えば、ミトは傷つくだろう。
影はそう思って、あえて辛辣な言葉を選んだ。
一瞬でも、自分を哀れむように見たこの女を打ちのめしてやりたかった。

「あんたさ、さっきオレが生まれながらの身代わりってことに同情しただろ?」

「別に、そんなことないわ。ただ、その考えを受け入れられないだけ」

「あんたも身代わりだぜ」

「まあ、多妻制だものね。誰かにとって、掛け替えのない唯一の存在にはなれないってことはわかって来たわ」

ミトの言葉を影は意外に思った。

「へぇー。感情論だけで動く女かと思ったら、結構割り切ってるじゃねーか」

感心しているようにも聞こえる声音だ。

「仕方ないじゃない。それがラミリアのために私ができる唯一のことだもの」

「好きでもない男と結婚させられるのは、非人道的じゃないとでも言うのか?」

「存在そのものを抹消されることに比べたら、かなりマシだわ」

「皮肉かよ」

「どうとでも受け取って」

そしてミトは影から目を逸らした。
話が終わり、しばらく無言の時間が流れる。
先に動いたのは影だった。

「ま、いいや。これで説明は終わりだ」

そう言うと、影はギシっとベッドをきしませて、ミトに近づいた。
ミトがあっと思った時には、ベッドに押し倒されていた。

「それじゃ、やることやるか」

「ちょっ!ん…」

制止しようとしたが遅かった。
ミトの唇に、影が唇を押し付ける。
突然のキスにミトは硬直した。
影は抵抗がないのを良いことに、ミトの口をこじ開け舌をねじ込む。

「はっ…!」

声をあげるミト。
影はミトが逃げないよう体重をかけ、手で顔を固定した。

(ウソでしょ!?!?)

ファーストキスを乱暴に奪われ、ミトは泣きそうになる。

(私、どうなっちゃうの!?)