大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「セルファ…」

ずっと黙っていたユフィーリオが口を開いた。

「あの夜のこと、本当にごめんなさい…。セルファをこんなに傷つけてしまったなんて…。色々な事が重なって、体調も悪くて、あのときの私はとても混乱していたの」

そして、セルファの元へ歩みを進めた。

「来るな」

セルファは吐き捨てるように言った。
だけど、ユフィーリオは歩みを止めない。

「セルファ…」

目の前まできて、ユフィーリオはセルファを見上げた。
そして、ポロポロと涙をこぼした。

「ごめんなさい。あなたが一人で苦しんでいるときに、私、なんてことをしてしまったんだろう…。
今日、あなたが大怪我をしたって、血がたくさん出て騒ぎになったと聞いて、いてもたってもいられなくなったの。セルファが死んだらどうしようって、恐くて仕方なかった」

ユフィーリオはセルファの手を握った。
セルファはその手を振り払いたくて、でも動けない。

「私、やっぱりセルファだけを好きなの。いつだって、強くて、優しくて、でもときどき甘えてくれるセルファのことが大好きなの。失いたくないの」

そしてユフィーリオはセルファを抱きしめた。

「私、本当に何を迷っていたんだろう。自分のことばかり考えて、愛するあなたを見失って、本当にダメな私…。
セルファはもう、私のことなんて好きじゃなくなってしまった?」

ああ、もう、どうでもいい。
セルファはそうやって突っぱねようとして、でもできなかった。