大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「説明しねーとわかんねーのかよ。オレは、あんたになるつもりなんか一切ないんだよ。あんたを一刻も早く表に引っ張り出して、影武者に戻りたいんだよ」

ユフィーリオはセルディオの発言に息を呑んだ。

「また僕を罠にかけるつもりか?」

「はぁ?またってどういう意味だよ」

「いつか僕を退かせて表に出ようと企んでいたんだろう?その企みが成功したのに、この上何を望む?」

セルファはどこまでも自分の立場をセルディオが切望しているのだと思いたいらしい。

「わけわかんねーこと言ってんじゃねーよ。オレは表に出たいなんて思ったこと、欠片もないね。自由になりたい、と頭を過ぎった事はあったけどな。
あんたになったとしても、自由なんかないだろ。ローザンの第一王位継承者として、ガチガチの生活を強いられるだけだ。
オレはずっと影武者として生きてきた。これでも自分の役割にプライドを持ってんだよ。なんでそれが、あんたになりたがらなきゃならねーんだよ」

セルディオはセルファの勝手な思い込みを、心底バカバカしいと思った。

「白々しいことを言うな!影武者の立場で満足する者がいるわけないだろう!」

影は大きなため息をついた。
セルファとは永遠に分かり合えないだろう。
だからと言って、もう自分の気持ちにフタをする気はない。

「あんたとは表と裏、真逆を生きてきた立場だから、理解しろったってできねーんだろうな。
だけどな、あんたの影武者としての役目を全うするのがオレのプライドなんだよ。
この状況を引き起こした原因が自分にあることが腹立たしいぜ。何としてもひっくりかえして、あんたを元の立場に戻さねーと、オレがオレ自身を許せないんだよ」

セルファはもう言い返す気にもならなかった。
セルディオの言葉など、何も心に響かない。

「あんたにもローザンを継ぐ者としてのプライドがあるんじゃねーのか。いじけてないで、表に戻る方法を考えろよ」

セルファは無言を続けた。