大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「これで、私とセルファ様の外見の違いはなくなりました」

ふん…、と小さくシルフィは息を吐いた。

(やはり、そういうことか)

「そして、セルファ様の左耳が酷く負傷したというのは、これで公になりました。
稽古中不慮の事故で左耳を切り落とし、その場にいたセイラムが医師を呼んだのです。
私が怪我をした瞬間を見たのはセイラムしかおりませんが、その後運ばれ、怪我の治療をしている私を見た者はたくさんおります」

セルディオは包帯の上から左耳にそっと触れた。

「恐らく、私とセルファ様を並べても違いがわからないような傷になっていることでしょう。これで、私は影武者に戻れます。
ローザンを継ぐのはセルファ様唯お一人。私はまたセルファ様の影になりましょう」

「受け入れぬと言ったら?」

シルフィとセルディオは睨み合った。

「そのときは自分の命を絶つまで。そうすれば、セルファ様が表に出る以外に方法はなくなります」

「本気か?」

シルフィは動揺を完全に隠して、あえて突き放すように言った。

「本気でそう思っていました。私の存在が、ローザン全てを狂わせているのではないかと思ったのです。
私が消え去ることで全て元通りになるならば、そうするのが私の役目だと」

シルフィは黙ってセルディオを見ている。

「元々私はこの国に存在しないことになっている人間。
私などいなくとも、セルファ様は立派にローザンを守っていかれるでしょう。ならば、ひっそりと命を絶とうと思っておりました」

「自己犠牲か、くだらぬ」

シルフィは吐き捨てる。