大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「セイラム、君はその場にいたということだね。事情を詳しく言いなさい」

セルディオを睨みつけたままシルフィはセイラムに問う。
その言葉の裏に「真実を全て話せ」という意味を込めて。

「申し訳ございません。私が至らないばかりに、セルファ様にこのような大怪我をさせてしまいました」

セイラムは深々と頭を下げた。

「タテマエはいらぬ。事実だけを話せ」

シルフィは苛立ちを隠さずセイラムに圧力をかけた。

「早朝セルファ様に申し込まれ、剣の稽古をつけておりました。私は受け身専門となり、セルファ様は攻撃の訓練をなさっておりました」

セイラムはセルディオに言われている通りの報告を始めた。

「そんな話をしろと言っているわけではない!」

シルファが一喝する。

「父上、何を怒っておられるのですか?先ほど申し上げましたが、私が跳ね上げた剣が、たまたま私の左耳を切り落としただけです」

「そんな偶然があってなるものか!」

セルディオはひるまずに話し続ける。

「その場にいたのは私とセイラムのみ。他に目撃者はいませんが事実です。
それに、そんな偶然とおっしゃいますが、ついこの間、このような偶然があったばかりではありませんか」

「セルディオ…おまえは…」

シルフィは怒りに体を震わせた。

「父上、いくら人払いをしたとはいえ、その名を軽々しく口にするのはどうかと思います」

「セイラム!おまえがいながらなぜこのようなことになった!」

シルフィは怒りの矛先をセイラムに向けた。

「申し訳ございません」

セイラムは跪き、頭を床につけるように下げた。

「セイラムを責めるのはお門違いではありませんか?」

セルディオは淡々と言った。

「一体どういうつもりだ」

シルフィは憎々しげにセルディオを睨みつけた。

「聞いてくださいますか?私の話を」

「言ってみるが良い」

セルディオは頷いた。