大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「でも、わからないのよ。私たち、本当に絆なんてあったの?じゃあ、どうしてセルファは私の気持ちを考えてくれなくなったの?
あなたなら、考えてくれるでしょう?ローザンのために、私に優しくしてくれるでしょう?」

しかし、あまりに身勝手なユフィーリオの発言に、強い拒否感を持った。

「私をセルファ様の代わりにしないでいただきたい」

影は冷たく言い放つ。
結局ユフィーリオは、セルファと上手くいかなくなった寂しさを、自分で紛らわそうとしているだけなのだ。
ローザンのため、セルファの影武者として生きてきた。
だけど、ユフィーリオにまでセルファの身代わりのように扱われるのは我慢ならなかった。

「現実を見てください。私は影武者であって、セルファ様ではありません。あなたに優しく接するのは、セルファ様を演じる必要がある場のみ。私にあなたを愛さなければならない義務などありません。
今ローザンに必要なのは、セルファ様の元にあなたを連れて行くこと。今夜拒否するならばそれも良いでしょう。別の方法を考え、改めて実行するだけです」

ユフィーリオは大きなショックを受けている。

「もう、私にはあなたしかいないと思っていたのに…」

「それは錯覚です」

「ここにはもう、私の味方は誰もいないんだわ…」

これから自分は、誰にすがっていけば良いのだろう。

「セルファ様がいらっしゃいます。それを確かめるためにも、一緒に王宮へ行きましょう」

ユフィーリオはしゃがみ込んで首を振った。

「そうですか。では、私は退室致します」

これ以上この部屋にいるのは限界だった。
影はユフィーリオを残して部屋を出る。