大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「もう、セルファは私に優しくしてくれない。表面的に優しさを装ってるだけよ。私にはわかるもの。ずっと一緒だったから。私のことだけを考えて優先してくれたセルファは、いなくなってしまったのよ。
でも、あなたがいる。私はあなたが本当に優しい人だということを知っているわ。私には、もうあなたしかいないの。なんでもしてくれるんでしょう?なら、私とずっと一緒にいてよ!」

「ふざけるな!」

ついに影は我慢ならなくなった。
ユフィーリオに強い嫌悪を感じた。

「あんたがオレの何を知っているって言うんだ」

吐き捨てるように言った。
豹変した影に、ユフィーリオは驚き、目を見開いている。

「セルファ様と何があったかは存じ上げません。しかし、セルファ様も一人の人間です。凄まじい努力で、ローザンの第一王位継承者として相応しくい続けられるよう振舞っておられますが、崩れることがあって、何の不思議がありましょう。
それもセルファ様であることに変わりはありません」

影はもう一度冷静さを取り戻すために、息を大きく吸った。

「そして、そういうときこそ支えるのが、セルファ様の正妻であり、将来ローザンの王妃となるユフィーリオ様の務め。
少しばかり自分の理想と外れた言動があったのかもしれませんが、たかがそれだけで、自分の役割を放棄するおつもりですか」

「私も努力してきたわ…」

消えそうな声でユフィーリオは言った。

「もちろん、私も良く存じ上げております。お二人の強い絆も知っております。
セルファ様は、今とても辛い立場でいらっしゃいます。そんなときこそ、ユフィーリオ様が支えずにどうするのですか」

今度は優しく諭すように言う影。