大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「私が誰だかわかりますか?」

影は一歩下がり、ユフィーリオと距離をとった。
ユフィーリオの表情が劇的に変わった。

「私はセルファ様の影武者です」

そして、影はひざまづき、ユフィーリオに頭を下げた。
まずは、第一王位継承者の正妻であるユフィーリオに敬意を表さなければならない。
ユフィーリオは影に自分の正体を露にされ、喜びと同時に驚き、その姿をただただ見つめるしかできなかった。

「ユフィーリオ様にお伝えしなければならないことがございます」

影は顔を上げてユフィーリオの様子を確認した。
驚いているようだが、大丈夫そうだ。

「セルファ様は、今怪我をされていて療養中です。そのため、私が代理で公務を行っておりました。
セルファ様は今夜こちらに来ることはできません。ですので、ユフィーリオ様がセルファ様の部屋へ移動していただきたいのです」

「セルファが怪我…」

予想もしなかった話に、ユフィーリオは更に驚いている。

「はい。命に関わる怪我ではございませんが、事情があり、別邸に来るのは困難です。詳しくはセルファ様本人にお聞きください。私は部屋の外で待っています。
今すぐに支度を。そして、部屋を出た後、決して私が影武者であることを周囲に気付かれぬようにお願い致します」

そして影は立ち上がった。
できる限り簡潔に伝えるべきことだけを伝えた。
後は一刻も早くユフィーリオをセルファのもとへ連れて行くだけだ。

「待って」

ユフィーリオは部屋を立ち去ろうとした影を呼び止めた。

「私は…行きません」

影は驚いて振り向く。

「私は、あなたとずっと話しをしたいと思っていました。セルファではなく、影武者のあなたと」

影は状況が理解できない。

「私に?どういったご用件でしょうか」

一刻も早くユフィーリオにセルファに会わせたい。
しかし、行かないと言うユフィーリオの話に耳を傾けなければ説得は難しそうだ。
影はユフィーリオの話を促した。