大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

気持ちを切り替えるのは得意だと自覚していた。
今まで、たくさんのものを割り切って生きてきた。
だから、今夜もできる。
影は自分に言い聞かせた。

心を落ち着かせ、自分の中のスイッチをオンにする。
そして、影はセルファとなって、ユフィーリオの部屋に訪れた。

ユフィーリオは、この日を待ち望んでいた。
それと同時に、恐れていた。
結局、あれから体調不良が続き、公務に出ていない。
だから、影武者ともあれっきりだ。

だけど、今夜はセルファが部屋に来る日。
ユフィーリオにはなぜか影武者が来るのではないかという予感があった。
普通に考えたらセルファが来るはずだ。
頭ではわかっていたが、それでももしかしたらと、その予感を信じて待っていた。

そして、ついに扉はノックされた。
ユフィーリオの心臓がドクンと跳ね上がる。

恐る恐る扉に近づくユフィーリオ。
動悸が激しくなり、気分が悪くなる。
ユフィーリオはそれに耐えて、意を決して扉を開けた。
扉の向こうにはいたのはセルファ?それとも影?

「会いたかったよ、ユフィ」

優しく微笑むこの人が、一体誰なのかわからない。
動けないユフィーリオに笑顔を向け、影は部屋に入った。

(顔色が悪いな…)

薄暗い部屋でもわかるほどだった。

「ユフィ、横になったほうがいい」

影はユフィーリオをベッドへ誘導する。
しかし、ユフィーリオはベッドに入ろうとしない。
じっと影を見つめている。

「さあ、とにかく休んで」

影はとりあえずユフィーリオをベッドに座らせる。
影は悩んだ。
ユフィーリオの様子がかなり良くない。
この状態で、セルファのことを説明して大丈夫だろうか。
しかし、伝えねばならない。