大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】



部屋に一人きりになり、影は崩れるように座り込んだ。
影にとって、父親でもある国王は絶対的な存在。
理屈ではなく、本能的に逆らう事ができない大きな存在だった。

その国王に反抗してしまった。
一時的な怒りの感情で、勢いで突っ走ってしまったが、一人になって冷静さを取り戻すと、恐ろしくて震えが止まらなくなった。

国王の命令は絶対。
自分はこれからセルファとして生きていかなければならない。
ずっと。

今まで影武者として生きてきた。
それが自分のすべてだったのに、今更セルファとして生きなければならない。
まるで自分が消えてなくなるような恐怖だった。

トントン。

ドアがノックされる。
影は動くことができない。
もう一度ノックされたあと、扉が開いた。
セイラムだった。

「セルファ様、ユフィーリオ様の部屋を訪問する時間でございます」

恭しく頭を下げるセイラム。

(そうだ、それでもオレにはやらなければならないことがある。セルファが守り通してきたものを、セルファに渡さなければ)

影は力を振り絞って立ち上がった。