大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「心にもないことを。
…いや、それもおまえの企みか。父上までも言いくるめて、ローザンを支配するつもりなのだろう!」

セルファは影に掴みかかった。

「やめなさい!セルファ!!」

シルフィが一喝する。
セイラムが割って入り、セルファを影から引き剥がした。

「ずっとこうなることを狙っていたんだろう!!」

血を吐くようにセルファが叫んだ。

「そんなはず、ねーだろ!」

影も叫ぶ。

「ずっと影武者として生きてきた。それがオレの人生で、誇りでもあったんだ。オレは、それを貫きたいだけだ!」

「止めないか二人とも!」

シルフィが声を張り上げた。
セルファと影は動きを止める。

「これは決定事項だ。君たち二人に拒否権はない。
今から自分の役割を自覚し、精進しなさい。これで話は終わりだ。
セルディオ、いや、セルファ、君の説明してほしいという要求にはきちんと応えたよ。さあ、これからユフィーリオの部屋に行きなさい」

反論を許さない迫力でシルフィは言い切った。

「やめろ!ユフィに触るな!」

セルファはセイラムを振り払おうと暴れた。

「いいえ、その命令には従えません」

影は諦めない。

「これ以上私を怒らせるな」

「ユフィーリオ様は私の存在を既にご存知です。私ではなく、セルファ様が行くことに何の問題がありましょうか」

「馬鹿なことを言うものではない。君たちにはもう、耳の形が違うという決定的な差がある。日常的に入れ替わることなど不可能だ」

シルフィがバッサリと影の発言を切り捨てる。
それでも影は黙らなかった。

「この部屋ならば、お二人が会っても誰の目には触れません。それならば問題ないのではないでしょうか」

長い沈黙の後、シルファは大きなため息をついた。

「………わかった。ならば、君がユフィーリオをここへ連れて来るといい。譲歩するのはここまでだ。
セルファ、いや、影武者を奥の部屋へ」

シルファは兵士たちに命令した。
セルファは必死で抵抗したが、腕利きの兵士二人に取り押さえられ、引きずられるように連れ戻された。
そして、シルフィはずっと泣いているエイリーナを支えるようにして、セイラムを引きつれ部屋から出て行った。