大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「まさか、いらっしゃるとは…」

驚愕のあまり、影は上手く言葉が出てこない。

「失礼させていただくよ」

シルフィの言葉を聞き、影は慌てて道を開けた。
エイリーナはシルフィに続く。
その後にセイラムが入ってきた。

「こちらへ」

セイラムは続き部屋に2人を案内した。
シルフィとエイリーナは部屋にあったソファに座る。
それと同じタイミングで、隠し扉から人が現われた。
セルファと二人の兵士だった。

(なんだ?どういうことだ?)

影は状況が理解できず立ち尽くす。
セルファは兵士二人に両腕を拘束されるような格好で、引っ張られるように連れてこられた。

「二人とも、こちらに来なさい」

シルフィが言う。
影はそれに従い、セルファは兵士に抱えられて影の隣へ移動した。

「離してやりなさい」

シルフィはそう言ったが、兵士達は戸惑った。

「しかし、国王様…」

「大丈夫だ。そうだね?セルファ」

セルファは無言で俯いている。
左耳に痛々しく包帯が巻かれていた。
兵士達はシルファに一瞥され、セルファから一歩離れた。

「さて、事情を聞くまでは命令に従わないと言ったそうだが」

シルフィは影を見た。
その視線を正面から受け取る影。
恐怖で体が硬直した。
物心つく前から、国王の絶対性を徹底的に教育されている。

「少し雰囲気が変わったな」

シルフィは小さく呟いた。

「早速事情を説明しよう。君たちのいさかいでセルファの外見に大きな変化が生まれた。話はセイラムから詳しく聞いたが、きっかけはセルファにあったそうだね」

セルファは何も言わない。