影は落ち着かない気持ちでセルファの部屋にいた。
国王の命に逆らったのも、何かを要求したのも初めてだった。
国王は自分の父親、しかし、父親として接してもらった記憶はもない。
それは母親も同様だ。
影の両親であるが、親子としての時間を過ごしたことなど一度もなかった。
気がついたときには、国王と妃、その忠実な下僕という関係だった。
今まではそれで問題なかった。
言われたことを淡々とこなしてきた。
(だけど、今回だけは…)
元々影はセルファ好意も悪意も持っていなかった。
セルファは第一王位継承者であり、自分はそれを守る役目を持って生まれてきただけ。
自分をそう理解していた。
セルファという人格に対して、無関心とも言える。
それは実の両親に対する感情に良く似ていた。
だが、セルファが如何にユフィーリオを大事にしてきたかは良く知っている。
セルファが選んだ方法は、大国の第一王位継承者として相応しくない愚かな行為だったとは思うが、一途な想いを無下にはしたくない。
セルファが自分の立場を捨てようとしてまで守り続けたユフィーリオに、国命だからと、何も考えず触れる気にはどうしてもなれなかった。
しかし、自分がそう思い、国王の意思に背いたのは、ミトに出会ったからかもしれない。
ミトがいなければ、自分は何も考えず無感動に応じていたかもしれない。
大切な女性を別の男に奪われる苦しみなど、理解しようとも思わずに。
それにしても、セルファは一体どうしたのだろうか。
傷口から感染症でも起こしたのだろうか。
どうして、出てこないのか。
影が物思いに耽っていると、部屋のドアが叩かれた。
(セイラムか?)
影は立ち上がり、扉を開ける。
そして、来客が誰かを知り、絶句した。
それは影の父と母、すなわち、ローザン国王シルフィ=ローザンと、妃のエイリーナだった。
国王の命に逆らったのも、何かを要求したのも初めてだった。
国王は自分の父親、しかし、父親として接してもらった記憶はもない。
それは母親も同様だ。
影の両親であるが、親子としての時間を過ごしたことなど一度もなかった。
気がついたときには、国王と妃、その忠実な下僕という関係だった。
今まではそれで問題なかった。
言われたことを淡々とこなしてきた。
(だけど、今回だけは…)
元々影はセルファ好意も悪意も持っていなかった。
セルファは第一王位継承者であり、自分はそれを守る役目を持って生まれてきただけ。
自分をそう理解していた。
セルファという人格に対して、無関心とも言える。
それは実の両親に対する感情に良く似ていた。
だが、セルファが如何にユフィーリオを大事にしてきたかは良く知っている。
セルファが選んだ方法は、大国の第一王位継承者として相応しくない愚かな行為だったとは思うが、一途な想いを無下にはしたくない。
セルファが自分の立場を捨てようとしてまで守り続けたユフィーリオに、国命だからと、何も考えず触れる気にはどうしてもなれなかった。
しかし、自分がそう思い、国王の意思に背いたのは、ミトに出会ったからかもしれない。
ミトがいなければ、自分は何も考えず無感動に応じていたかもしれない。
大切な女性を別の男に奪われる苦しみなど、理解しようとも思わずに。
それにしても、セルファは一体どうしたのだろうか。
傷口から感染症でも起こしたのだろうか。
どうして、出てこないのか。
影が物思いに耽っていると、部屋のドアが叩かれた。
(セイラムか?)
影は立ち上がり、扉を開ける。
そして、来客が誰かを知り、絶句した。
それは影の父と母、すなわち、ローザン国王シルフィ=ローザンと、妃のエイリーナだった。



