大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

さらにその次の日も影が公務を行うことになった。
公務をすることに問題はないのだが、今夜はユフィーリオの日。
夜まで自分がセルファとして会いに行くよう命令され、影は困惑した。
伝達役であるセイラムからその話を聞き、さすがに理由を聞く影。

「それはおかしな話だな。ユフィーリオ様は影武者の存在を知っている。それなのに、なぜ私が行かなければならない?」

「私に聞かれても困ります」

セイラムは冷静に答えた。

「私は国王の命を伝えるのが役割です。国王から何も聞いていない以上、その問には答えられません」

(ちっ、マニュアル通りの答えだな)

影は質問を変える事にした。

「セルファ様の怪我はそんなに悪いのか?ユフィーリオ様に会いにいけないほどに」

しかし、その問にも首を振るだけのセイラム。

「国王からは、とにかくユフィーリオ様に気付かれぬよう、セルファ様として会いに行くようにとのことでした」

「それは、どういう意味だ?」

「そういう意味なのでしょう」

「まさか、そんなことができるはずがない」

影は受け入れ難かった。

「国王に逆らうと?」

セイラムの瞳が鋭く光る。

「さすがの私も、その命を受ける気にはならない。ユフィーリオ様はセルファ様がずっと守ってこられた人。これだけは応じられない」

「あなたに拒否権はありません」

セイラムに取り付く島はない。

「せめて理由が知りたい」

影はめげずに粘る。
セルファのことは嫌いだが、だからと言って彼が一番嫌がる行為をするのは嫌だった。

「今日の国王の予定は既にいっぱいです」

「何時でも待つ」

影は食い下がった。

「理由を聞くまでは、ユフィーリオ様の部屋には行けない。この件だけは、直接お話を伺うまで命令を拒否させていただく。国王に…、父上にそう伝えてくれ」

セイラムはしばらくく考えて、そして渋々と頷いた。