大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「ミトはこの4日間、何してたんだ?」

そんな、ささやかな話題でよかった。
ミトとの時間を過ごし、気持ちを解したかった。

「なに?その大雑把な質問。しかも、側室の情報ってそっちに行ってるんでしょう?」

ミトはクスリと笑った。

「情報はくるけど、以前みたいに、王宮うろついたり、別邸でキッチン貸し切ったり、そういうお盛んな動きが最近ないからな。流石に側室が部屋の中で何やってるかまでは、情報回ってこねーし?」

影はニヤリと笑った。

「今まで通りよ。部屋で統計学勉強して、気が向けば庭を散歩して、ティアラとお茶して。でも、流石に1ヶ月地味に生活続けると飽きてくるわ」

「ミトにとっては退屈な場所だろうな、ここは」

「そうね。少し元気も出てきたから、明日は久しぶりに王宮にでも行ってみようかな」

「そうだな、セルファに会う心配もないしな」

口を滑らす影。

「え?」

「…と」

(やべ、気が緩みすぎた)

「まぁ、明日はオレがセルファとして1日過ごすことになってるから、安心してブラブラするといいぜ」

そういう日は今までも度々あった。
説明がなくてもミトも不思議に思わないだろう。

「そっか。最初からあなたに聞けば良かったんだわ。セルファに会わないとわかっていたら気楽」

喜ぶミト。

「ずいぶん元気になったじゃねーか」

ミトの明るい笑顔を見て、影は嬉しくなった。

「うん。あなたのお陰かもね」

「オレ!?」

意外なことを言われ、影は驚いた。

「我ながら、妙な関係だなって思うんだけど、あなたには何でも言えるのよね。吐き出すことで、ずいぶん救われたわ。
それに、結構気遣いさんじゃない?そういう優しさにも、たくさん助けてもらったような気がする」

「……」

絶句する影。
自分の顔が紅潮するのがわかった。
部屋の照明は薄暗いので、ミトには気付かれていないのが幸いだ。

「ありがとうね」

「別に、オレは自分の仕事をしてるだけだよ。側室のフォローもオレの役目だからな」

ミトの顔を直視できなくなって、影は目を逸らした。
影の動揺にミトは全く気付かない。
その夜、二人はとりとめのない話をしながらくつろいだ時間を過ごした。

次の日も、影はセルファとして公務をこなした。
偶然ミトが王宮見学に来ているところを遠くから見つける影。
ミトは自分に全く気付いていないようだ。
はしゃぐミトを、侍女のエイナが窘めているようだった。
そんなミトを見て、影の心は暖かくなった。