大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

その日から、影はずっとセルファとして日中の公務も行っていた。
セルファの怪我の状況がどうなっているのか、まったく情報が入らない。
気になるが、状況を確認する立場にない影は、モヤモヤした気持ちを抱えつつ、日々の公務を行っていた。
そして、ミトとの夜がやってきた。

「会いたかったですよ、ミト」

「私もですわ、セルファ様」

いつものごとく、扉の前まではセルファを維持し、ミトの部屋に入ったとたんに自分に戻った。

「あーーー、疲れた」

そう言って、ドサリとソファに腰を下ろす。

「珍しいわね、大っぴらにそういうこと言うの」

ミトはお茶の準備を始める。

「あ?ああ、そうかもな。なんか色々あるんだよ…」

言いかけて、影は言葉を濁した。
必要以上に話してミトに気苦労をかけたくなかったし、ミトがポカやらかして口を滑らされても困ると思った。

「いろいろ?」

「いや、別にそこ、突っ込まなくていーぞ」

「そう?じゃあ突っ込まないけど」

ミトは準備したお茶をソファのテーブルに置いた。
アッサリしすぎるほどの引き際の良さも、好ましいと思う影。

「疲れてるなら眠る?いつもみたいに、時間になったら起こしてあげるよ」

「そうだなー…」

気のない返事をする影。
確かに疲れていたが、少しミトと話したい気分だった。

明日もセルファとして公務を行うよう言われている。
もちろん、情報は入ってこない。
ただ、自分がやるべきことをやるだけだ。

そう思っているのだが、自分が表に出る大きな原因が自身にあるため、複雑な心境だ。
だから、ミトの顔を見てホッとした。
いつもと同じミト。