大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「どうしたのかな?僕の顔に、何かついてる?」

「あなた、もしかして…」

「ん?」

「影武者の」

「ユフィ」

影はユフィーリオの言葉を遮るように名を呼んだ。

「いらっしゃったよ」

「ええ…」

そう答えながらも、ユフィーリオは影から目が離せなかった。
確信したのだ。

(この人は、セルファじゃない…)

隣にいるのは影武者だ。
それがわかってしまい、とたんに動悸が激しくなった。
来賓の対応は主にセルファ、いや、影武者がしてくれる。
ユフィーリオは辛うじて笑顔を作り、何とか場をこなした。

ときどき、いや、かなりの頻度で影武者を目で確認してしまう。
見れば見るほどセルファそのもの。
しかし、このところセルファがまとっている刺々しさが全くない。
紳士的でどこまでも優しく穏やか。
変わってしまう前のセルファそのものだった。
胸がいっぱいになってしまう。

(私は、やっぱりこの人のことが好きなのかしら…)

そんなことばかりを考えてしまい、食欲もなくなってしまった。
影武者の声が心地よくユフィーリオの耳に響く。

なぜセルファではなく影武者なのか。
セルファに何かあったのだろうか。

(それとも、もう私の顔も見たくなくなってしまったのかもしれない…)

昨日の激昂したセルファの顔を思い出すと、胃の辺りがキリキリと傷むような気がした。