大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「体調はどうかな?無理せず休んでいてもいいんだよ、ユフィ」

優しく声をかける。

「顔色があまり良くないようだ」

影はユフィーリオの顔を覗き込んだ。

「ん…、今は大丈夫…」

ユフィーリオは顔を背ける。

「そうか…。辛くなったら、すぐに僕に言うんだよ」

昨夜、セルファとユフィーリオの間に何かあったのだろう。
セルファが影を呼びつけるような、何かが。
ユフィーリオは影の顔を見ようとしない。
わからないというのは、何かとやり辛い。

あまり多くを語らない方が良いだろう。
影はユフィーリオを気遣いながらも、口をつぐんだ。
もうすぐ来賓が到着する時間だ。

「ごめんなさい…」

ユフィーリオは小さな声で謝った。

「え?」

「昨日の私、どうかしてたの。疲れてたのかな…。本当に起き上がっているのも辛いくらいで…。だから、あんなことを言ってしまったの…」

周囲にはもちろん護衛や従者もいる。
セルファだけに届くようにユフィーリオは小声でそう言った。

「いいんだ、ユフィ。謝るのは、むしろ僕の方だよ。君に辛い思いをさせてしまったね」

影はそう答えた。
何があったかはわからないが、こう言われたら、セルファならこう答える、という言葉が条件反射のように思い浮かび、言葉がスルスルと口から出てくるのだ。
本当ならば、ここでユフィーリオの肩を抱いたり、優しく髪をなでたりすれば完璧だろう。
しかし、ユフィーリオはセルファの大切な人。
影武者として一緒に公務をすることがあっても、絶対に触れるなと言われていた。

「後でゆっくり二人で話そう。ユフィの気持ちを聞かせてほしい」

そう言って、慈愛に満ちた目でユフィーリオを見つめた。
ユフィーリオはようやく顔を上げ、不思議そうに影をじっと見た。