大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「おっしゃる通り、私はセルファ様の影武者です。
しかしながら、私が仕えるのはあなたではなくローザン国王。
王命とあれば直ちに従いますが、あなたの命令に従わなければならない道理はありません」

「屁理屈だな。父上には私が頼めば、すぐにおまえの望む王命とやらを発してくれるだろう。側室達までもが私のものになるのが惜しいか?」

セルファは憎悪の篭った眼差しを影に向けた。

「惜しい?まさか。ただ、あなたの気まぐれとわがままには呆れましたが」

この期に及んで、影は無表情のままだ。

「言葉が過ぎるぞ!」

セイラムが影を制止する。

「それは、私に対する暴言だな」

セルファはニヤリと笑った。
ポーカーフェイスを貫く影武者が、ついに口を滑らせた。

「とんでもない。正直な感想でございます」

「調子に乗るな!」

これは侮辱だ。
セルファは影を罰する正当な理由を見つけて、内心ほくそ笑んだ。

「もう下がりなさい」

セイラムが割って入ってきた。
影を無理矢理億の部屋へ戻そうとする。
その手を振り払う影。

「何を怒っていらっしゃるんですか?ユフィーリオ様ただ一人を愛せないならば、この国から出て行くと駄々をこねたのはあなたではないですか。
それを、今度は側室達を自分のものにしなければ気が済まないと言い出したのですから、周囲が呆れてなんの不思議もないでしょう。
自分勝手に周囲の者を振り回すのは大概にしていただきたい」

影は無表情の淡々と言い放つ。

「貴様、何様のつもりだ」

「その言葉、そのままあなたにお返し致します」

「……!!!」

セルファの中で何かが切れた。
最初に動いたのはセイラムだった。
とにかく影を黙らせ、この場から立ち去らなければならないと判断した。

その判断は正しかったが、実行には移せなかった。
まるで背中に目でもあるかのように、影は僅かに動いてセイラムを避けたのだ。
セイラムは影の体に触れることすらできなかった。