大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「どうされましたか?」

セルファがユフィーリオの部屋から出ると、セイラムが駆け寄ってきた。
控えていた侍女も、頭を下げつつ心配そうにセルファの様子を伺っている。

「ユフィは体調が悪いようだ。先ほど吐いてしまった。今は横になっている。介抱してあげてほしい」

セルファは侍女に向かってそう言う。

「かしこまりました」

深々と頭を下げ、侍女は慌てて部屋に入って行った。

「今日は戻る」

セイラムにそう言うと、早足でセルファは歩き出した。
セイラムは黙って後をついてくる。

「セイラム、部屋に戻ったら影武者を呼ぶように」

「影武者を?ですか…?」

怪訝に思うセイラム。
今日1日の報告は、セルファがユフィーリオの部屋に行く前に済ませている。

「伝えたいことがある」

「かしこまりました」

そして無言で歩き続ける二人。
部屋に着くと、セイラムはただちに影武者を呼びに行った。
セルファはその間に護身用のナイフを服の下に隠した。

殺したいと心底思うが、それを実行してはいけないと自制する理性はあった。
これから伝える内容を影武者が素直に応じればそれで良い。
あるいは、逆上して我を忘れるようなことになっても良い。

「念のためだ」

セルファは小さく呟いた。