大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】



「ユフィ…」

セルファはその名を呼ぶことしかできなかった。
これ以上何かを言えば、罵声になってしまう。
冷静でいられるはずがなかった。

頭の中は、影への憎悪でいっぱいだ。
許せない…。
許せない許せない許せない!!!
あの男の存在そのものが。
消えてなくなればいい。

(僕は二人もいらない。一人で充分この国もユフィーリオも支えていける)

誰かがあの男を殺してしまえばいい。
誰も手を下せないなら、自分があの男を殺す。
セルファに明確な殺意が生まれた。
怒りの矛先が定まり、セルファは冷静さを取り戻す。
しかし、それは冷静さではなく狂気だ。

「ごめん、ユフィ。君が楽になれるように、僕はもっと頑張るよ。
今夜はゆっくり休んで。今侍女たちを呼んできてあげるから」

そう言って、セルファはユフィーリオの部屋を出た。