大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「オレはオレじゃないんだよ。求められているのは、必要とされたとき、セルファとして完全に入れ替わることだけなんだ。
完全に他人にならなければならないのに、自分の人格が必要か?そんなの、邪魔なだけだろ。
実際、今まで考えもしなかったことに立ち止まったりして、マジでやり辛かった。疑問なんて持ったら厄介なだけなのに…な…」

ミトは人を完全に模倣しなければならない影の気持ちなんてわからない。
だけど、今までずっと影が何かに葛藤しているのは感じていた。

「だから、一時期ずっとセルファだったの?」

「ああ」

「じゃあ、なんでそれを続けなかったの?」

純粋な疑問だった。
影はセルファになりきったかと思ったら、ふとした瞬間影に戻る。
全うしたい目的が明確ならば、行動は一貫するはずだ。

「それは、居心地が良かったからなんだろうな…」

「居心地?」

「セルファでもなく、影武者としてでもない自分としてミトと接するのが心地よかったんだ。その心地よさに、勝てなかったんだろうな、オレは。
だから、人格がフラフラした。ブレまくりだ」

「確かに」

深く頷くミト。
瞬時にセルファになったり、影に戻ったり。
「なんて器用な」と思っていたが、それは影の心の迷いだったのだ。

「病でしばらく外に出れなかったときは、心底焦ったぜ。セルファにあんたを奪われると思ったら気が気じゃなかった」

「あのときは、私も凄く焦ったわ」

ミトは影の言葉のニュアンスに全く気付かない。