大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

一方、セルファは不機嫌だった。
ユフィーリオが自分に何の相談もなく、いきなり別邸へ戻ってしまったからだ。

その日、ユフィーリオは立ち入ってはいけないと言われているはずの場所へ侵入し、迷った挙句に警備兵に保護されたようだ。
一体何があったのか。
セルファはユフィーリオに直接話を聞こうと思っていたのに。

(しかし、まぁ、いい)

セルファはユフィーリオに少しうんざりしていた。
思いがけず一人の時間が持てたのは嬉しい。
ユフィーリオのいないベッドに横になる。
日々多忙で、疲れはピークだった。

(今日はゆっくり眠ろう…)

そう思ったが、睡魔はなかなか訪れない。
体は疲れているのに、神経がピリピリととがっている。
セルファはユフィーリオのぬくもりが恋しいと思った。

(いや、ユフィじゃなくてもいい…)

人肌が恋しい。
触れ合って発散し、くたくたになって眠りにつきたいと思った。
それならば、むしろユフィーリオではない方が好都合だ。
もしも、影がいなければ自分は側室の部屋に行けただろう。
セルファは心底影が憎いと思った。