大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

ユフィーリオは別邸に戻ると、部屋に1人こもった。
今まで初恋の相手だと思っていたセルファ。
セルファから結婚の申し込みをされたときは、運命だと思った。
でも、あの場所で出会ったのはセルファではなく、セルファの影だった。

(私はどうしてあの一瞬で彼に心を奪われてしまったのかしら…)

セルファは、そしてセルファと瓜二つの影は、当然容姿が美しい。
12歳のときに出会った影も、今日の影も、あの場所で光り輝くように美しかった。
神秘的ですらあった。

(でも、容姿だけなら、美しい男性は別にもいるわ)

やっぱり、自分が好きなのはセルファだ。
ユフィーリオはそう思おうと努力した。
影との出会いはきっかけに過ぎない。

その後、本当のセルファが自分を見初め、熱心に通ってくれた。
セルファの優しさと愛情が、ユフィーリオの気持ちを更に強いものにしたのだ。

(だから、私が心から愛しているのはセルファだけ)

ユフィーリオは自分が抱くセルファへの愛情を偽物だと思いたくなかった。

(でも…)

初めて会った影の強烈な印象は、ずっとユフィーリオの中に残っている。
ぶっきらぼうのようで、だけど優しかった。

(ぶっきらぼう?)

セルファにはそんなところなどない。
結婚して2年、長い時間を共に過ごしてきた。
セルファは少し神経質なところがある。
しかし、それは良い意味で人に敏感で優しいということでもあった。
そこが好きだった。

(冷静に思い返せば、セルファが『サボリ』なんて自ら言うはずがないんだわ…)

でも、自分はあのときの影の対応に、とても好感を持った。
セルファとは真逆の態度だったのに。

「ああ…、わからない…」

ユフィーリオは両手で顔を覆った。
考えれば考えるほど、わからなくなった。