大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

ユフィーリオはしばらく中庭で呆然としていたが、ミリナが心配しているはずだと思い、ノロノロと立ち上がった。
元の場所に戻ろうと試みるが、ここがどこだか全くわからない。
あの扉に戻れるのだろうか。
以前来たときと同じ、人気のない場所。
あてもなく歩き続けている内に、ミリナが呼んだ警備兵に見つけてもらい、ユフィーリオはなんとか戻ることができた。

「もう二度とこちらに足を踏み入れぬよう、お願い致します」

警備兵に念を押されてしまい、出迎えたミリナは泣いていた。

「私がユフィーリオ様にしっかりお付き添いできなかったせいで、恐い思いをさせてしまいました。申し訳ございません」

ミリナに何度も頭を下げられ、さすがにユフィーリオは罪悪感を持った。

「いいのよ、私がいけないんですから。それより、私、今日は別邸に戻ろうと思うの。明日の公務は午後からだし、いいかしら?」

「ええ…、もちろんでございますが、それでよろしいんですか?」

ユフィーリオは頷いた。

「後でセルファには手紙を書くわ」

今夜は、どうしてもセルファと過ごす気にはなれないユフィーリオ。
セルファに会いたくなかった。
別邸に行けば、今日はセルファの顔を見ずに済む。
セルファは夜まで公務が詰まっているし、別邸には影がセルファとして側室の部屋に訪れるのだから、セルファは近づけない。

(少し1人でゆっくり考えて気持ちの整理しないと…)