大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「ユフィーリオ様っ」

ミリナが慌てて声をかける。
ユフィーリオはそれには応えず、走り出した。

「ユフィーリオ様！お待ちください！そちらは関係者以外立ち入ってはならぬと申し付かっております！」

ミリナが慌てて追いかけてくる。
だけど、ユフィーリオにはそんなことはどうでも良かった。

バタン！

大きく音をたててユフィーリオは扉を開いた。
しんと静まり返った宮内。
まっすぐに伸びた回廊。

（きっとこっち）

ユフィーリオは走った。
しかし、回廊の先は複雑な迷路のようになっていた。
ユフィーリオはあっという間に迷ってしまった。

「何、ここ…」

でも、当時の自分もそうだった。
まるで昨日のことのように鮮明に記憶が蘇る。
迷って迷って辿り着いたのが、あの中庭だった。

（お願い、今度もあの場所へ連れてって！）

ユフィーリオは走り続けた。
人気のない薄暗い廊下が急に開けた。
眩しいばかりの日の光。
ついに、その場所を見つけた。

「そうよ…ここだわ…」

ユフィーリオは確信した。
この先に、あの場所がある。
ゆっくりと歩き出すユフィーリオ。
そして中庭に出た。

「眩しい…」

薄暗さに慣れた目には眩しすぎる日光。
ユフィーリオは思わず手で目を覆った。
少し目が慣れて手を下ろし中庭を見ると…。

「セルファ…！」

そこにはセルファがいた。