大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「セルファ、こっちを向いて…」

ユフィーリオはセルファの背に触れた。
セルファは何も言わない。

「お願い、ちゃんと話を聞いて」

ユフィーリオの目から涙が溢れてきた。

「疲れてるんだ。眠らせてくれないか」

背を向けたまま、セルファはユフィーリオの手を振り払った。
ユフィーリオはあまりのショックで言葉が出ない。

「どうして…?」

後は泣くことしかできなかった。
さっきまであんなに抱き合っていたのに、どうしてこんなに孤独なんだろう。
さめざめと泣いていると、セルファの小さなため息が聞こえた。
ノロノロと姿勢を上げるセルファ。

「ほら、ユフィ、泣かないで。ごめん。忙しくて疲れて、君に八つ当たりをしてしまった。僕を許して」

そう言って、ユフィーリオの頭を撫でる。

「私、あなたしかいないの…」

ユフィーリオはセルファに抱き付いた。
セルファはしっかりと抱きしめる。

でも、ユフィーリオは見てしまった。
ほんの一瞬見たセルファの顔。
その目が酷く冷めていたことを。

そして確信してしまった。
セルファに以前のような情熱や暖かさがなくなってしまったと。

きっかけは、やはり影が病床に臥して、夜もセルファが努めるようになったことだろうか。
あれから少しずつセルファは変わっていったように思う。
自分だけのセルファだったはずなのに、ほんの数日間だとしても、側室達と共有してしまった。
それが、自分の不安を煽ったのは間違いないが、セルファにも何かしらの変化を与えたのだろう。

(私だけじゃ満足できなくなったの?それとも、私より大切な人ができた?)

セルファは今までユフィーリオ一筋だった。ずっと自分だけに尽くしてくれた。
そもそも、側室とセルファはほとんど接点がなかったのだ。
もしも、一定時間夜を共にして相手を深く知り、女性としてユフィーリオより側室に魅力を感じていたのだとしたら?

(いや!そんなこと絶対ありない!)

ユフィーリオは恐くなって思考を中断した。
今自分を抱きしめているセルファのぬくもりだけを信じよう。
そう思うのだが、一度生まれた疑念が消えることはなかった。