大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

その後、いつも通りセルファに報告をし、影は自室に戻った。
ぐったりと疲れていた。
今まで平静を保ったが、もう限界だ。
崩れ落ちるようにベッドに倒れこんだ。

ついにミトを抱いた。
自分の気持ちがセイラムに届くことはないと絶望し自暴自棄になったミトは、無抵抗だった。
影はそんなミトを優しく労わるように触れたが、ミトは何も言ってくれなかった。
無言のまま、ときどき苦しそうな表情をするミトが忘れられない。
魂の抜けた、まるで人形のようなミトを抱くのは辛かった。
それでも、セルファに先を越されるくらいならばと影は思った。
体が通じれば、少しはミトの気持ちを自分に向かせることができるかもしれないという淡い期待もあった。
しかし、終わった後ミトは影に背を向け、肩を震わせて泣いていた。
強烈な後悔の念に襲われる影。
だけど、どうしようもない。

「大丈夫か?体、辛かったか?」

そう声をかけたが、ミトは背を向けたまま無言を続ける。
ミトの背中から拒絶を感じた。

影はベッドから下りて衣服を身に付けると、ソファに移動した。
重い空気の中、それでも影はミトを気遣う。
そろそろ部屋を出る時間だ。

「また、4日後に」

そう言って、うつ伏せのままのミトの頭を優しく撫でた。
ミトは身動きすらしない。
影は苦しい気持ちを押し殺して、ドアノブに手をかけた。
ここからは、セルファに戻らなければならない。
今日ほど自分の立場を放棄したくなったことがあっただろうか。
影は自分の出生を呪った。