大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「さっきは悪かった。恐かったよな。もう、無理にはしない」

それでもミトは動かない。
放っておいてほしかった。

「だけど、セルファは別だ」

影はミトの髪を撫でた。

「もし、あいつがここへやってきたら、ミトは逃げられない」

(だから、なんだって言うの…)

「だったら、オレにしておけよ」

影が何を言いたいのかイマイチわからないミト。
だけど、それがどうしたというのか。

「優しくする。大事にする。だから、オレを受け入れてくれ…」

それは懇願だった。

「そうね…」

ミトはゆっくりと顔を上げた。
影が不安そうな目で自分を見ている。

「もし、そうなったら、私もあなたも困るものね…」

二人の取引は、決して知られてはならないことだ。

「そういう意味で言ったんじゃねぇよ」

影の言葉はミトには響かない。

「いいよ。どうせ、そういうことをしにここに来たんだもの」

ミトは影の顔を見ずにそう言った。

「いいのか?」

「もう、どうでもいい」

投げやりなミト。

「どうでもいい?誰でもいいのか?オレでも、セルファでも」

「何言ってるの?セルファじゃ都合悪いのはあなたも同じでしょう?」

「だから、そういう意味じゃねぇよ!」

「誰でもいいわよ、もう」

セイラムでなければ、誰だって同じだとミトは思った。

(オレは違う!)

影はそう叫びたかった。
だけど、何を言っても今のミトには響かないだろう。
懸命に自分の気持ちを伝えて、今以上に惨めな気持ちになりたくなかった。